少し風雨が収まったころ外に出てみるとちぎれた葉や木の枝が散乱し、吹き返しの生暖かい風が身体にまとわりつくように吹いていました
平安時代のころは秋の台風を野分(のわき)と言ったそうで、強い風が野原を分けて吹く様子が具体的なイメージとして伝わってきます
枕草子や源氏物語の中にも野分の去った後、あわてて草木を片付ける様子が描かれています
面白いのはどちらもそこに美女を登場させているところでしょうか
枕草子では荒れた庭を物憂げに眺める薄い上着を引きかけた美女が登場し、源氏物語では光源氏の息子の夕霧が野分見舞いに訪れたところで偶然源氏の最愛の妻である紫の上を垣間見、そのあまりの美しさに圧倒されるという場面が用意されています
野分で荒れた庭と美女、という取り合わせに何だかこちらまで心がざわついてしまいます